建設の現場でコンクリート打設をするときに「ケミカルアンカー」という言葉を耳にすることがあります。
「アンカー」はよく聞くけど「ケミカルアンカー」って何?通常のアンカーと何が違うの?と疑問を持つ方も少なくありません。
ここでは「ケミカルアンカー」とは何か?通常のアンカーとは何が違うのか、ケミカルアンカーをどのような場面で使うのかについてまとめています。
ケミカルアンカーとは何か?目的や用途
ケミカルアンカーとは、「ケミカル(化学)」という名前がついている通り、化学反応によってアンカーボルトやネジ、鉄筋(異形棒状)を固定するための薬品です。
すでに存在しているコンクリート基礎や擁壁に対して、新たにコンクリートを打ち足したいときに固定する目的で使用します。
通常のアンカーとの違い
通常のアンカーは型枠を組む前や組んでいるときに、アンカーボルトを鉄筋に取り付けます。その後、コンクリート打設を行い固定します。
このため、コンクリート打設を行う前にしっかりと位置出しを行い、場所を確認しておく必要があります。
ケミカルアンカーは通常のアンカーとは異なり、後から追加できるため、「あと施工アンカー(後施工アンカー)」とも呼ばれます。
出来上がった構造物に対して、寸法を計測し後からアンカーを足せるので、施工が非常に簡単です。以前に比べて価格帯の安い商品も出てきたため、最近では通常のアンカーよりもケミカルアンカーが好んで使われる傾向にあります。
ケミカルアンカーの種類
ケミカルアンカーには様々な種類があります。
使用している薬剤の違い、包装がビニール(カプセル方式)なのかガラス管なのか、チューブなのかなど様々です。
薬剤の違いによって強度、効果時間などが変わります。強度も高く、効果時間が短いものはその分価格も高くなります。
ケミカルアンカーの施工方法
ケミカルアンカーの施工はとても簡単です。大きく分けると以下の6つの工程に分かれます。
1つめの「寸法出しとマーキング」と最後の「固まるのを待つ」は準備や待ちのようなものなので、実際の施工は4工程程度です。
施工手順に関しては、ケミカルアンカーを製造販売しているDECOLUXE(日本デコラックス)のサイトがわかりやすいのでこちらを元に解説します。
寸法だしとマーキング
最初にアンカーボルトを打ちたい場所に、マーキング(墨出し)を行います。
アンカーボルトを埋め込む深さピッタリに穴を開ける必要があるため、ドリルピットにビニールテープでマーキングを行います。
挿入するアンカーボルトも同様の位置にビニールテープを巻いておきます。
なお、ケミカルアンカーの種類によっては使用可能なアンカーボルトの形状が指定されています。例えば、DECOLUXEのRタイプであれば先端が片面カットや両面カットになっているものは使用できますが、寸切りや丸棒、円錐カットのアンカーボルトは使用できないので注意が必要です。
コンクリートに穴を開ける
マーキングした位置にドリルで穴を開けます。
穴の中を掃除する
穴の中にはコンクリートの削りカスが入り込んでいるので、これらをキレイに出す必要があります。
バキュームの先端に細いチューブを取りつけて吸い取ります。
しっかりと吸い取れたら、ブラシでこびりついたカスを描き出します。
ブラッシングをすると粉がポロポロと出るので、再度吸い取ります。
以上で清掃は完了です。
ケミカルアンカーを注入する前に、アンカーボルトを穴に差し込んで穴の深さがマーキングした位置と合っているかを確認しておきます。
深さが足りないようであれば、深さが合うまで慎重にドリリングと清掃を繰り返します。
ケミカルアンカーを注入する
開けた穴の中にケミカルアンカーを注入します。
注入するといっても、カプセルタイプやガラス管タイプのケミカルアンカーを梱包ごと穴の中に入れるだけです。
アンカーボルトを打つ
ケミカルアンカーを挿入したら、アンカーボルトを埋め込みます。
固まるのを待つ
飛び出てきたケミカルアンカーを取り除き、後は固まるまで待ちます。
固まるまでの時間はケミカルアンカーの種類や気温にもよります。
DECOLUXEのRタイプであれば、以下のようになります。
- 30℃:15分
- 20℃:30分
- 10℃:2時間
- 0℃:8時間
- -10℃:32時間
気温が高ければあっという間に硬化し、気温が低いと1日以上かかることもあるので注意が必要です。
以上がケミカルアンカーの施工手順です。
参考
DECOLUXEのYoutube動画が非常に分かりやすいです。
削りカスの清掃不足や、過剰なボルトの埋め込みにより強度が下がってしまうことは、サンコーテクノさんのYoutube動画がわかりやすいです。
個人的には、Everyday Lifeさんのケミカルアンカー施工実例もわかりやすかったのでオススメです。